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Vol.160 :1000円のワインと10万円のワインはどちらが美味しいか?の問いを考える

先日、ある夕刻にふとつけたTVの報道番組で、若い男性アイドルグループがA)スーパー特売品の安い牛肉、B)最高級ブランド牛の食べ比べをしていました。それぞれの素性を隠し、「どちらが美味しい?」との問いに、意見が3対3の真っ二つに割れていました。牛肉は普段から口にする身近な食べ物だけに、私たちが支払う価値って本当は何なのだろう、と改めて考えてしまいました。そういえば、毎年お正月に芸能人が集まって、食べ物や飲み物の味が分かるかどうかで一流を決めるバラエティ番組を見たことがあります。くだらないなあと思いつつも、本気も本気、真剣に取り組むほどなぜか間違えてしまう面々を見て、へえそんなに意見が分かれるもの?と見入ってしまいます。

そんな中、価格に対する美味しさがよく分かるようで分からない(?)定番の品の一つとして挙げられるのがワイン。一本数万円する高級シャンパンの代名詞「ドン・ペリニヨン」と2千円ぐらいの安価なスパークリングワインを飲み比べたお笑い芸人がこう言っていました。「分かった!絶対にまずい方が高い方だ!」こう断言してはばからず(笑)、見事当ててしまったので会場が湧いていました。私は、その後彼が選んだ理由を聞いて、なるほどそうかと頷くことができました。

実際のところ、高級なスパークリングワインの一番の魅力は、その複雑で奥行きのある豊かな香り。そして、口の中でふわりと広がるムース(泡)の口当たりの心地よさやきめ細かさ。もちろん、飲んだ後も長く続く余韻も大切です。でもこれは普段からワインを気を付けて飲むという行為に慣れていない人には分かりにくいもの。一番分かりやすいのは、単純に「味」。スパークリングワインの場合は、酸っぱさと甘さの2対極が分かりやすい指標でしょう。

私がなるほど、と納得した理由を話したお笑い芸人は、「絶対に酸っぱい方が高い方だ!」と言っていました。ある意味、この判断基準の分かりやすさは鋭く当たっているのかもしれません。極上のシャンパンに欠かせないのが酸。スパークリングワインにとってキレイな酸味は命ともいえる存在です。また、逆に、甘味が強いものほど、初心者を含めて一般受けしやすいため、安価なものに多くあります。(一部高いものでも甘いタイプはあります。)

ワインの美味しさの決め手となる要素の一つに、白ワインやスパークリングワインであれば「酸」の切れ味やバランス、また赤ワインは「タンニン」という苦味や渋みのもとになる成分が大きく影響します。飲み慣れないうちは、この酸味や苦味が美味しいとは思えないでしょう。でも私たちが子供の頃に好きだったケチャップがたっぷりかかったオムライスや甘いソースのハンバーグから少しずつ卒業して、味わいが複雑で時にはほろ苦い料理が好きになっていくのと同じで、ワインも飲み付けるにつれ、少しずつ好みに変化が生じてきます。この傾向は、ほのかに甘い白ワインから少しずつ辛口の白ワインへ、そしてタンニンがあまり効いていない軽口の赤ワインから、次第にどっしりとした色調の濃い赤ワインへ。それぞれの好みで千差万別ではありますが、飲むにつれ、時間とともに少しずつ好みが変化してくることが多くあります。

よって、いくら一本10万円しようとも、飲み慣れない人にその複雑味ある美味しさを納得してもらうのは土台無理という話です。子供にビールの美味しさを納得してもらうようなもの。きっと1000円の軽口な赤ワインの方がまだ美味しいと思うでしょう。ワインは、発泡、白、ロゼ、赤、甘口、酒精強化ワインなど種類も多い上に、生産した国や地域、造った人によって驚くほど多種多様な広がりがあります。高いワインが分かったから一流というわけではありません。今の自分にとって、値段の高さに関係なく一番美味しいと思うワインを見つけられることが、一流なのではないかと思います。

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