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ゲームユーザー以外をブログで「ロックオン」 バンダイナムコの挑戦

ゲームユーザーやキャラクターファン以外の顧客層を取り込み、新ビジネスを展開したい――バンダイナムコの挑戦は、Webサイトで着々と進んでいる。

 「絵本」といえば、子どものものだというイメージが根強い。そこに焦点を絞り、幼児を抱える主婦層をターゲットに開設されたサイトがある。バンダイナムコ ゲームスの「きずなstyle」だ。

 同社はバンダイとナムコの経営統合によって、2006年3月に誕生した。旧ナムコは、「遊び」を文化ととらえ、かねて福祉や飲食などの事業に「遊び」のエッセンスを取り入れていた。「きずなstyle」は、同様のアプローチで立ち上げられたブログだ。「みのりちゃん」という少女を主人公にした、いわゆる読み聞かせ絵本の販売促進を目的としている。
 ただ、その狙いは絵本の拡販にとどまらない。社長室文化・教育事業推進プロジェクトのチーフディレクター、浜野孝正氏は「当社はゲーム開発で得たノウハウを転用し、飲食やアミューズメントなどの事業を立ち上げてきた。従来のゲームユーザーとは大きく異なる主婦や幼児などの年齢層を、絵本を通じて(バンダイナムコの)ファンとして囲い込めれば、新事業を立ち上げ(て成功させ)られる可能性は大きくなる」と、サイトを展開する意義を説明する。

「親しみやすさ」が決め手と判断

 サイト開設は旧ナムコ時代の2005年11月。その際、最大の課題となったのは、これまで顧客層に据えた経験のない主婦の関心をひくためのコンテンツをいかにつくり上げるかだった。

 そこで、開設に先立ちサイトの体裁からコンテンツの内容・見せ方まで、最適なものに仕上げることを目指し、浜野氏を含む担当者2名と外部の制作会社で一から議論を重ねた。浜野氏が気を遣ったのはサイトに対する「親しみやすさ」の演出。サイト内の情報を読んでもらい、ひいてはファンとなってもらうためには欠かせない要素だったという。

 そんな浜野氏が着目したのが、そのころ加速度的に普及していたブログだ。トラックバックやコメント追加などの機能を使えば、読者は情報に容易に“絡む”ことができ、「Webサイトのハードル(=いちいちアクセスしなければならないという心理的な障壁)を下げる効果が見込めた」(浜野氏)からだ。

 コンテンツの内容は料理レシピや幼稚園入園時に必要な小物情報など、生活や育児でのお役立ち情報に定めた。親近感を持ってもらえるように、ブログ上に“仮想のママ”を存在させ、読者に語りかけるように情報を伝える手法も採用した。さらに「母親の視点」を取り入れるため、立ち上げ当初は男性だったもう1人の担当者を、しばらくして女性に変更した。

“リアルなママ”の声も加えて

 2006年5月には、新コンテンツとして「きずなママレポーターblog」を追加した。従来の一方的な情報提供のあり方を見直し、「読者の声をコンテンツに吸い上げる」(浜野氏)ためだ。

 レポーターblogでは、ブログ上で公募した一般の母親レポーターが週単位で連載している。開始当初は、3カ月ごとに交代する3人のレポーター集めに若干苦労したが、現在の第5期のレポーター募集では約2週間で30人の応募があるなど、かなり反響を呼ぶようになった。連載の内容も、当初は自由記述としていたが、特定のテーマに沿ったものにしてもらうことにした。

 こうして浜野氏らは、「きずなstyle」に読者の関心をそらすような情報が掲載されないように試みたのである。

アクセス数増からリピーター増に照準を変える

 「きずなstyle」は、幼児を抱える主婦層に、絵本を通じて(バンダイナムコの)ファンになってもらうことも狙っている。さらに、その主婦層に対する新ビジネスの展開も視野に入れている。従って、「きずなstyle」そのものに収益モデルはない。新事業を立ち上げ、成功させる可能性を探る、実験的な試みといっていいだろう。

 だが、企業サイトである以上、アクセス数にも配慮することは求められた。浜野氏は当初、サイトを周知するため、あえてコスト負担が強いられるメール広告やバナー広告などに手を出した。その効果は確かに見られた。しかしながら、いずれも長続きしなかったという。認知度が高まった分、アクセス数は伸びたが、その大半が主婦向けのコンテンツに関心の薄い人たちだったからではないかと推測される。

 こうした経験を基に、浜野氏は目標を単なるアクセス増からリピーターの獲得へと切り替え、「コンテンツの質と量」を重視する方針に改めた。2006年5月の「きずなママレポーターblog」の追加は、そのためでもあった。

アクセスする人の質を高める

 レポーターblogの開始を機に、「きずなstyle」に新たなコンテンツの掲載サイクルが生まれることとなった。月曜日に浜野氏の記事、火曜日から木曜日まではレポーターの記事、金曜日には1週間を総括するコメントを掲載するという具合だ。これでほぼ毎日サイトが更新されるようになり、読者の関心をWebサイトにつなぎとめる結果をもたらした。

 サイト内で紹介したブログへのトラックバックや、育児をテーマにしたサイトとの相互リンクも積極的に行っている。こうした、サイト運営にまつわる地道な活動は、着実に実を結んでいる。事実、アクセスを解析し、リンク元をたどったところ、ほかのブログからのトラックバックが増えていた。また、環境をテーマにしたサイトからのリンクといったように、意外な効果も確認されたという。

 「将来の事業展開を考えると、アクセス数の増加以上に、アクセスする人の“質”を高めることが重要だ。トラックバックや寄せられるコメントから、その条件を満たしつつあることを実感している」(浜野氏)

 子どもに悪影響を与えるととらえられてきたゲームを事業の中核に据えるバンダイナムコにとって、絵本事業への参入は「ハードルが高いものだった」と浜野氏。そうしたこともあって、「きずなstyle」の中では、バンダイナムコのロゴは最下段に“ひそかに”配置されている。こうして、初めてアクセスしてきた主婦に安心感を与えるようにしている。

「みのりちゃん」のビジネスでも確かな手ごたえ

 「きずなstyle」は開設から1年半。主婦からの評価を高め、リピーターを増やしてきた。「新事業の足がかりとして手ごたえを感じている」と浜名氏がいうように、すでに「みのりちゃん」に関心を持つ企業からキャラクター利用に関する問い合わせが寄せられている。

 気になる絵本の販売部数は、2006年2月に発売した『みのりちゃんのすてきなおうち』が1900部、同11月に発売した『みのりちゃんのみんなでごはん』が1400部ほど。ここで得たノウハウは今後、主婦や幼児向けのWebサイトを開設する際に、さまざまな形で活用できるとにらんでいる。

 バンダイナムコは近く、Webサイトの運用の仕方やコンテンツの内容を改めて見直す方針だという。「単なるゲーム会社という当社の企業イメージを刷新したい」(浜野氏)というのがその理由だ。「きずなstyle」は、同社の新たな側面を切り開く存在になろうとしているのかもしれない。

取材・文=岡崎勝己、アイティセレクト編集部

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