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戦国マップを“塗りたくる”電子マネーの勢力圏争い

電子マネーの戦いは「Edy vs. Suica」といわれて久しい昨今、「プリペイド(前払い) vs. ポストペイ(後払い)」に移ったともいわれる。はたして本当にそうだろうか。ほかの視点から見た戦いはないのか。そう考えて浮かび上がる1つの構図は「勢力地図」である。それは、ざっくりと描けば、あたかも戦国マップのようだ――。

日本全土で「塗り絵」が始まった

 3月にPASMO協議会/パスモの「PASMO」、4月にセブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」とイオンの「WAON」と、2007年はこれまで電子マネーの生誕が騒がれた。“交通系”からの新たな選択肢、“流通系”という新種の登場は、従来各メディアが取り上げてきた「Edy(ビットワレット)vs. Suica(東日本旅客鉄道、JR東)」という電子マネー界の勢力構図をきれいに打ち消した感がある。

 その状況は新たに「プリペイド(前払い)vs. ポストペイ(後払い)」という勢力構図にすり替えられた向きもある。いずれもプリペイド(前払い)方式である「Edy」「Suica」「PASMO」「nanaco」「WAON」の対抗軸として、ジェーシービー(JCB)の「QUICPay」など“クレジットカード系”が新たに「土俵に上げられた」形となったのだ。

 だが、各電子マネーによる戦いは、そうした構図だけではないのではないか。例えば、主婦層という市場における勢力争いもその1つだろう。そして国内における領土分布もまた、1つの側面といえなくもない。それは、すでに47都道府県を網羅している「Edy」「QUICPay」の分布の上に、「Suica」「PASMO」「nanaco」「WAON」などが相次いで「色を塗り足している」という構図である。


 中でも「nanaco」の利用可能範囲は一挙に全国の約7割(1都1道2府30県)まで広がっている。そのほか、「Suica」が関東(山梨県を含む1都7県)と熱海・伊東、仙台、新潟、博多地区、「WAON」が関東(同)と新潟、「PASMO」が首都圏という具合に、東日本地区を中心に分布を広げている(※1)。

 その「塗り絵」は、西日本地区でも展開されている。西日本旅客鉄道(JR西)の「ICOCA」(「Suica」の関西版)やスルッとKANSAI協議会の「PiTaPa」(関西地区の私鉄・バスなどの共通IC乗車券/電子マネー)なども徐々にではあるが数年前から普及を進めている。

 こうして、電子マネーの勢力地図は、刻々と塗り替えられているのである。

実は今、第2フェーズに差し掛かった

 野村総合研究所(NRI)によると、2007年の電子マネー市場規模は約6900億円。2006年を1800億円余としていることから、約4倍になっている。NRIは今後も、年間5000〜6000億円ずつ増大すると見ている(※2)。

 従って、2007年は正確には「電子マネー普及元年」といっていいかもしれない。ICカードでタッチすれば改札を通れるという利用形態は、大都市圏ではもうお馴染みとなった。それが小売りの決済シーンで使われる姿は、首都圏を中心に広がりつつある。このモデルを全国区に浸透させようとする起爆剤がそろったのが、2007年ということだろう。すると、これからどんなフェーズが訪れるのだろうか。

 まずは、先述したような、それぞれの電子マネーが使える地理的範囲のさらなる拡大だ。例えば今秋には「nanaco」が「イトーヨーカドー」「デニーズ」といったグループ企業の店舗に、「WAON」はグループ企業外の店舗に、それぞれ利用可能店舗に導入されることが発表されている。これが進めば、どちらも一挙に全国的な広がりを加速させることが予想される。

 一方、「Suica」の場合、「PASMO」とはその誕生当初から相互利用されている。また、JR東とJR西の両社が5月28日に発表したように、「ICOCA」とは2008年3月にも相互利用できる見通しとなった。その後は、東海、北海道、九州、四国の旅客鉄道各社でも電子マネー/IC乗車券が順次導入され、「Suica」と相互利用される可能性を秘めていることから「Suica」「ICOCA」「PASMO」の勢力が全国的に広まることは至って自然な流れである(※3)。

 こうしてみると、どの電子マネーも遅かれ早かれ全国的に使えるようになる様相を呈している。つまり、勢力地図はいずれ、「各電子マネーの色が合わさった1色」に統一されても不思議ではないのである。ということは、現在は電子マネー普及という第1フェーズのさ中、地理的な勢力分布がまだはっきりと見られる第2フェーズが現れ始めた状況、あるいは両フェーズが重なり合っている状況といえそうだ。

 いずれにせよ、さまざまな規格が淘汰されていくのはまだ先のことだろう。ただ、それぞれの電子マネーに「色がつき始めているのは確か」(NRI金融コンサルティング部上級コンサルタント、安岡寛道氏)なのは間違いないだろう。それを表しているのが「塗り絵」された「戦国マップ」なのである。

取材・文=アイティセレクト編集部

※1 「PASMO」の場合、「Suica」と相互利用できるため、実際の利用可能範囲は「Suica」のそれと一致するが、PASMO協議会/パスモが展開している利用可能店舗は、首都圏の6私鉄(東京地下鉄を含む)と東京都交通局(都営地下鉄)沿線となる。
※2 「これから情報・通信市場で何が起こるのか」(2007年1月発行)による。ただ「PASMO」が予想外に売れたことなどから、NRIはすでにこの数値を上回る勢いになると見ている。
※3 東海、北海道、九州、四国の各旅客鉄道のうち、すでにIC乗車券を導入しているのは東海のみ(2008年3月にも「Suica」「ICOCA」との相互利用が開始される予定)。北海道は2008年秋、九州は2009年春以降に導入予定と発表している。四国は2014年と噂されている。電子マネー機能については、北海道のみ、IC乗車券導入開始と同時にサービスすると発表している。
※4 本稿の内容は、一部を除き、基本的に4月17日現在となる。


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